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自治体・行政

4か月で801件の生活支援。「外国人から選ばれる茨城」に必要なもの

茨城県のIBARAKIネイティブコミュニケーションサポーターが2026年4月から7月末に801件対応しました。役所や病院への同行が中心です。人を呼ぶだけでなく暮らし続けられる地域をどうつくるかを、イバトコ編集部が考えます。

イバトコ編集部
役所・病院・情報周知という支援の内訳を、件数の内訳として並べたイバトコのイメージ図

01 / CONCLUSION

結論

茨城県は、母語で生活を支える「IBARAKIネイティブコミュニケーションサポーター」の支援実績として、2026年4月から7月末までの4か月間で801件に対応したと公表しました。内訳は役所・免許関係手続きへの同行等が352件、情報周知が229件、病院への同行等が123件などです。県はこの制度の目的を「本県に安心して暮らせる環境を整備し、急速な人口減少や少子高齢化が進む中で、外国人から選ばれる茨城づくりを推進」することと説明しています。この記事は制度の紹介で終わらせません。801件の中身が、手続きの同行と情報を届けることに集中している点に注目します。人を呼ぶ施策と、来た人が暮らし続けられる環境をつくる仕事は別のものです。後者がどこまで整っているかが、これからの地域の選ばれ方を左右する——という視点で読み解きます。

02 / KEY POINTS

この記事でわかること

  • 支援実績は2026年4月から7月末までで801件。内訳は役所・免許関係手続き同行等が352件、情報周知が229件、病院への同行等が123件、子育て関係相談対応等が37件、労働関係相談対応等が9件など
  • 801件は件数であり、801人ではない。同じ人が複数回利用した場合の扱いや実利用者数は公表されていない
  • サポーターは104人、24か国・地域、21言語(2026年1月27日時点)。制度は令和6年1月に創設された
  • 支援の対象は「日本語への理解が十分でない外国人」と説明されている
  • 県内の在留外国人数は111,808人で全国第10位。出身は148の国・地域(無国籍を除く)、県人口に占める割合は4.01%(2025年12月末時点・出入国在留管理庁「在留外国人統計」)
  • 市町村別では、つくば市15,073人が最多。人口に占める割合で見ると常総市が12.8%で、上位10市町村の中で最も高い
  • 別途、公益財団法人茨城県国際交流協会が「外国人相談センター」を運営。11言語に対応し、相談は無料(電話代は利用者負担)

03 / WHAT HAPPENED

何が起きた?

茨城県県民生活環境部外国人政策チームがウェブサイトで公表している「IBARAKIネイティブコミュニケーションサポーター」のページ(2026年8月20日更新)によると、同制度の支援実績は2026年4月から2026年7月末までの期間で801件でした。内訳として示されているのは、役所・免許関係手続き同行等が352件、情報周知が229件等、病院への同行等が123件、子育て関係相談対応等が37件、労働関係相談対応等が9件です。サポーターの認定数は2026年1月27日時点で104人、24か国・地域、21言語。支援の対象は「日本語への理解が十分でない外国人」と説明されています。県は制度の目的について「本県に安心して暮らせる環境を整備し、急速な人口減少や少子高齢化が進む中で、外国人から選ばれる茨城づくりを推進」すると記載しています。県の外国人政策チームのページによれば、この制度は令和6年1月に創設され、外国人コミュニティなどで活躍する人をサポーターとして認定する仕組みです。なお茨城新聞は2025年9月19日付で、新たに17人が認定されて計87人になったと報じており、その後2026年1月時点の104人へと増えたことになります。

04 / CHANGES

具体的に何が変わる?

数字の読み方には注意が必要です。県が公表しているのは「801件」という対応件数であり、801人ではありません。同じ人が手続きと病院で2回利用すれば2件になり得ますし、実際に何人が利用したかは公表されていません。また、内訳として挙げられている5項目を足すと750件で、801件には届きません。県のページが「情報周知:229件等」と「等」を付けていることからも、示されている内訳は全体の一部と読むのが妥当です。もうひとつ、制度が対応するのは24か国・地域、21言語です。一方、県内に暮らす在留外国人の出身は148の国・地域にわたります。ただし出身国の数と必要な言語の数は一致しません。英語や日本語で用が足りる人もいれば、同じ言語を複数の国で使う場合もあるため、この差をそのまま「足りない」と読むことはできません。困ったときの窓口としては、県とは別に、公益財団法人茨城県国際交流協会が水戸市で「外国人相談センター」を運営しています。日本語・英語・ベトナム語・中国語・スペイン語・タイ語・タガログ語・ポルトガル語・インドネシア語・シンハラ語など11言語に対応し、電話・面談・オンラインで受け付け、月曜から金曜の8時30分から17時(祝日・年末年始を除く)、相談は無料です。

05 / EDITORIAL VIEW

イバトコ編集部の解説

(以下は発表内容ではなく、イバトコ編集部による考察です。)801件の内訳を眺めていて、いちばん目を引くのは役所・免許関係手続きの同行が352件と、全体の中で突出していることです。次いで情報周知が229件、病院への同行が123件。つまりこの制度が主に担っているのは、通訳というより「手続きの場に一緒に行くこと」と「必要な情報を届けること」でした。これは地味ですが、示唆的です。転入届、国民健康保険、児童手当、運転免許の切り替え。どれも制度としては誰にでも開かれていて、窓口も存在します。それでも同行が必要になるのは、制度の入口が言葉の壁で実質的に閉じてしまうからです。窓口があることと、たどり着けることは別だ——数字はそう語っています。地域づくりの議論では、外国人材の受け入れはしばしば「呼び込む」側の話として語られます。求人を出す、住居を紹介する、補助金をつける。しかし、来た人が暮らし続けるかどうかを決めるのは、その後の日常のほうです。子どもを学校に入れられるか、体調を崩したときに医者にかかれるか、更新の手続きが期限内に終わるか。ここで一度つまずくと、地域そのものへの信頼が下がります。ここで注意しておきたいのは、この801件をもって「制度がうまくいっている」とも「外国人の定着が進んだ」とも言えないことです。県は利用者数も、その後の転出入も公表していません。分かるのは、4か月で801件分の「言葉が理由でつまずきかけた場面」が県内にあり、それに人が対応したという事実だけです。ただ、その事実には意味があります。制度の穴は、こうした記録が残って初めて見えるようになるからです。

06 / LOCAL IMPACT

地域への影響

(以下は発表内容ではなく、イバトコ編集部による考察です。)出入国在留管理庁の統計によれば、2025年12月末時点で茨城県の在留外国人数は111,808人、全国第10位で、県人口の4.01%にあたります。前年同月比では9,259人、9.0%の増加です。ここで見ておきたいのは、この増加が県内に一様に起きているわけではないことです。市町村別で最も多いのはつくば市の15,073人ですが、市の人口に占める割合は5.7%。一方、常総市は7,431人で人数としては2位ながら、人口比は12.8%と上位10市町村の中で最も高くなっています。坂東市10.0%、鉾田市9.7%も同様に高い水準です。同じ「茨城県の話」でも、日常の風景は市町村によってかなり違うということです。この差は、行政サービスの設計にそのまま効いてきます。人口比が1割を超える自治体では、多言語対応は特別な配慮ではなく標準的な業務になります。逆に人数が少ない自治体では、必要になったときに頼れる先が近くにない、という別の課題が出てきます。県が広域で母語支援の担い手を認定している意味は、この後者のほうにあるのかもしれません。イバトコ自身にとっても、これは他人事ではありません。私たちは44市町村の地域情報を日本語で編み、一部を英語・韓国語・繁体字で出していますが、県内に暮らす人の出身は148の国・地域にわたります。地域の情報にたどり着けるかどうかは、旅行者だけの問題ではなく、そこで暮らす人の問題でもある。どう設計し直すかは、これからの宿題として受け止めています。

07 / FOR BUSINESSES

地域事業者への示唆

  • 外国人を採用している事業者:採用そのものより、入社後の手続きでつまずく場面のほうが多く発生します。役所・免許・保険といった手続きの時期を年間カレンダーとして把握し、同行や時間の融通を業務として組み込んでおくと、離職の理由をひとつ減らせます。
  • 医療機関・薬局:801件のうち123件が病院への同行でした。予約時に対応可能な言語を確認する運用や、問診票の多言語版を用意しておくと、当日の混乱と待ち時間を減らせます。県国際交流協会の外国人相談センターは三者通話にも対応しています。
  • 不動産・住居を扱う事業者:契約書と生活ルールの説明は、翻訳の有無だけでなく、誰が説明に立ち会うかで理解度が変わります。地域のサポーターや通訳の同席を前提に日程を組むだけでも、後のトラブルを減らせます。
  • 小売・飲食店:多言語表記を一度に整えるのは負担が大きいので、まずは価格・アレルギー・支払い方法など、間違うと困る情報から手をつけるのが現実的です。写真とピクトグラムは翻訳より早く伝わります。
  • 自治体・商工団体:人口に占める外国人の割合は市町村で大きく異なります(つくば市5.7%、常総市12.8%など)。県全体の平均値で施策を設計せず、自分の地域の比率と出身国の構成を確認したうえで、必要な言語から順に整えるのが有効です。

08 / FAQ

よくある質問

801件は、801人が利用したという意味ですか?
いいえ。県が公表しているのは対応件数であり、実際の利用者数は公表されていません。同じ人が複数回利用した場合の扱いも示されていないため、801人と読むことはできません。
内訳を足しても801件になりませんが、なぜですか?
県のページに示されている5項目を合計すると750件です。ページが「情報周知:229件等」と「等」を付けていることから、掲載されている内訳は全体の一部と考えられます。差分の内容は公表されていません。
サポーターはどうやって利用できますか?
県のページには利用方法や申込方法の記載がありません。生活上の困りごとの相談先としては、公益財団法人茨城県国際交流協会が運営する「外国人相談センター」があり、11言語に対応し、電話・面談・オンラインで無料で相談できます(電話代は利用者負担)。
サポーターは何人いますか?
2026年1月27日時点で104人、24か国・地域、21言語です。制度は令和6年1月に創設されました。茨城新聞は2025年9月19日付で、新たに17人が認定されて計87人になったと報じています。
茨城県にはどのくらいの外国人が暮らしていますか?
出入国在留管理庁の「在留外国人統計」によれば、2025年12月末時点で111,808人、全国第10位です。県人口に占める割合は4.01%、出身は148の国・地域(無国籍を除く)にわたります。

09 / SOURCES

情報源

掲載内容は公開情報をもとに編集しています。制度や運用は変更される場合があるため、行動前に公式情報をご確認ください。